避難生活被災直後の心のケア

被災直後の混乱の中では、さまざまな心の反応があらわれます。自分自身や身近な大切な人が被災したときに何ができるか、ポイントを解説します。

目次

被災直後の心の反応

被災直後、人はさまざまな精神的・身体的反応を示します。涙が止まらない、動悸がする、眠れない、イライラする、現実感がない、自分を責めてしまう、無気力になるなどの症状を起こすことがあります。いつもと違う自分に戸惑う人もいますが、これは「病気」ではなく、 「急性ストレス反応」と呼ばれ、非常事態に適応しようとする自然な反応です。

被災直後のセルフケア

身体のケアを通して心をケアする

強い緊張状態では、交感神経が優位になり、血圧や脈拍が上がります。持病のある方にとっては、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも上がるため、「呼吸を整える」ことが非常に大切です。おすすめは、吸う息の倍の時間をかけてゆっくりと吐く鼻呼吸です。息をコントロールすることで、自律神経のバランスを整え、自分の心身に「落ち着いて大丈夫」と伝えることができます。

身体を動かして心も温める

避難所など狭い場所では、つい体を動かす機会が減りがちです。しかし、ストレッチや簡単な体操は、凝り固まった筋肉をほぐすだけでなく、不安や緊張の軽減にもつながります。朝晩の決まった時間に、ほんの5分行うだけでも構いません。

周りの人ができる支援

心理的応急処置(PFA)

怪我をしたときまず消毒したり止血したりしますが、心もまた最初のステップが必要です。

1. 安全と安心の確保

  • 安全な避難場所を一緒に探す
  • 周囲の騒音や混乱をできるだけ避ける
  • 落ち着いた声で話しかける

混乱の中で「自分はひとりではない」と感じられることが、心の回復には何より大切です。

2. オープンクエスチョンで声掛け

  • 「眠れていますか?」
  • 「足りないものはありますか?」

これにより、相手の本当のニーズが見えてきます。無理に話を聞き出そうとせず、 「話したくなったらいつでも話してね」と、安心して話せる雰囲気づくりを意識してください。

生活リズムの崩れが心に与える影響

避難生活では、生活のリズムが乱れがちです。特に睡眠の問題は深刻で、音や光、他人の気配が気になって眠れないという声も聞かれます。

可能であれば、寝つけない人が静かに過ごせる夜間リビングスペースの設置や、耳栓・ アイマスクなどの工夫も検討するとよいでしょう。

心の「小さなサイン」を見逃さない

避難所では「みんなも我慢しているから自分だけ弱音は吐けない」と感じる人が多く、心の危機が見えにくくなります。以下のようなストレスサインに気づいたら、そっと声をかけてください。

  • 表情がない、目がうつろ
  • イライラや怒りっぽさ
  • 食欲の変化
  • 無口、あるいは異常におしゃべり
  • 物を落とす、転ぶなどの身体的変化

「気づいてくれる誰か」がいることが、何よりの支えになります。

支援者こそ、自分のケアを

他者の話を聴き支援することは、感情労働といえます。また、ご自分が被災しながら支援している人も多く、そうした人たちは自分の感情を抑えて「過剰適応」(頑張り過ぎ)しながら支援にあたっていると思われます。

過剰適応の一時期は交感神経が優位で頑張れるのですが、継続すると燃え尽きるリスクが大きいので早めにストレスサインに気づくのが大切です。自分自身の睡眠の質の低下や食欲不振などに気づいたら、必要な休息をとってください。

相談先

被災後の不安や悩みに関する相談ダイヤルや、参考になる情報が掲載されているサイトをご紹介します。些細なことでもぜひ気軽に相談窓口を活用ください。ひとりで抱え込まずに、話を聴いてもらうだけでも、気持ちが楽になったり、解決策が見つかったりすることがあります。

ストレス•災害時こころの情報支援センター(外部サイト)

全国の精神保健センター(外部サイト)

出典:海原純子 | 博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員教授

2025年08月08日公開

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